ラジオ関西
2007 年 3 月 3 日 ( 土 )、ラジオ関西「みんなの健康相談」での相談への回答のために準備したものを掲載します ( ラジオ関西 JOCR 558KHz / 放送の録音 AIFF 5.2MB, 8 min. 18 sec. )。
お尋ね : 野球選手の運動後の腰と背中の痛み
中学生、硬式野球部でキャッチャーをしています。野球を始めてから何カ月して、背中や腰が痛むようになりました。
痛みは運動後に起こり、整形外科で X 線写真や MRI 検査などを受けましたが、異常はないそうです。どこかいい病院、よい治療法はないものでしょうか。
お答え
どういう治療がよいのかを考える上で、まず、なぜ痛んでいるのかを考えておくことが必要ではないかと思います。原因を考え、対処法を考えます。対処方法は、普段の生活やスポーツでの注意から始まります。
腰を痛めるスポーツ選手は多いのでしょうか。
20 歳までのスポーツ選手のうち、約 7 割の選手は腰痛の経験があると言われています。はじめて腰が痛み出す時期は、高校時代が最も多く、次は中学時代です。
中学生、高校生は、スポーツで体を痛めやすいのでしょうか。
10 歳代の、特に前半は、体が成長する、いわゆる成長期で、骨格の強度、筋力など、体は発達の途上にあり、また、体は堅くなる傾向にあります。
中学校、高等学校に進学しますと、運動部での練習量は進学前よりも飛躍的に増えます。
まだ完成していない体にかかる負担が増えることで、様々な痛み、ケガや故障をかかえる選手が多くなります。
腰の痛みの原因としましては、具体的には、どのようなものが考えられるのでしょうか。
10 歳代のスポーツ選手の腰痛の原因となる疾患、異常としましては、腰椎での椎間板ヘルニア、脊椎分離症、椎体終板障害などが挙げられます。
椎間板ヘルニア
まず、椎間板ヘルニアですが、椎間板は、背骨同士の間にあってクッションの役割をしている組織です。それに負担がかかりすぎて、椎間板の組織の一部にほころびが生じ、脊髄神経の方へ出てくることがあります。その結果、神経がダメージを受けてしまう状態が椎間板ヘルニアです。
脊椎分離症
脊椎分離症とは、背骨の後の部分に負担が加わり続けることによって、骨の一部分に亀裂、破断が生じたものを脊椎分離症と呼びます。
椎体終板障害
椎体終板障害と申しますのは、背骨が成長する部分を椎体終板と呼び、軟骨からできています。ここは構造的に弱く、そこに負担が加わり続けて痛みを生じ、さらには、骨の成長にダメージを受ける部分が生じます。これが椎体終板障害です。
これらは、X 線写真や MRI 検査で分かるような典型的なものから、画像でははっきりと分かりにくい時期のものもあります。
また、病名がつくほどにははっきりとした異常とはいえないもの、たとえば、筋肉、背骨同士の間の関節や靭帯などの痛み、緊張、腫れといったものも考えられます。これらは、体にかかる様々な負担、体の使い過ぎによって、特に一定の運動が加わり続けることによって起こると考えられます。
それでは、質問者の方の運動後の腰痛については、どのように対策を進めていけばよいのでしょうか。
お尋ねの方の場合、スポーツの後に痛むことと、X 線写真や MRI 検査で異常が認められなかったということですから、まず、スポーツと関係がある状態と推測されます。
そして先に申しました椎間板ヘルニア、脊椎分離症、椎体終板障害などの何らかの異常が起こりかけているか、異常と呼べないまでも負担がかかっている状態だと思われます。
スポーツ選手の体の痛みは、腰痛に限らず、特定の動きを反復することによる体への負担が大きな要因になっています。
対策は、選手の体がなぜ痛んでいるのかを考え、練習の中で注意を払うことから始まります。
具体的には、どういった注意が必要なのでしょうか。
それはまず、選手一人ひとりにあった練習の量と内容を考えることです。体格、能力、ポジション、そして痛みや故障の有る無しに配慮することです。
痛みを抱えていない選手に対しましても、同じように注意を払い、故障を予防することが大切です。
練習の内容についてはどうでしょうか。
特定の運動だけを反復することがないように、様々な種類の運動を組み合わせて行うことが大切です。
練習前後には十分なウォームアップとクールダウンが必要です。身体の柔軟性を向上するための全身的な軽い運動やストレッチを取り入れることが勧められます。
また、成長期では、トレーニングを頑張ったほどには、筋肉は発達しません。偏ったトレーニングのやり過ぎは、かえって痛みや故障を引き起こすことにつながります。
様々な種類の運動、トレーニング、ストレッチなどを、偏ることなく、無理なく行うことが大切です。
スポーツ種目やポジションによる違いや注意はあるのでしょうか。
プレーのうち、どの動作が一番痛みの原因になっているのか、練習を振り返ってみることが必要でしょう。
野球ですと、バッティングのフォームやバットの重さなども注意を払う必要があると思います。
ピッチャー、キャッチャーは、他のポジションよりも特定の動作の練習が多くなる、つまり、練習内容の偏りがどうしても生じます。キャッチャーなら構える姿勢、中腰やしゃがんでボールを受ける球数なども見直してみるのがよいかと思います。
毎日練習しているなど、練習が多いことは問題になるのでしょうか。
運動で体を酷使しますと、その疲労やダメージの回復には 1 日よりも長い時間を必要とします。1 週間のなかで途中 1 日は休みの日があるのが望ましく、また軽い運動や基礎練習だけの日も必要です。
このようにして、痛んだ体の組織が回復するための時間、休みをいれることが必要です。
病院やクリニックなど、医療機関は、どこへかかるのがよいのでしょうか。
整形外科の医療機関の多くは、スポーツを専門分野の一つに挙げているでしょう。まずは、そういう整形外科でみてもらわれるのがよいのではないかと思います。
医療機関での治療法は、具体的にはどのようなものでしょうか。
体を使いすぎることによる痛みに対しましては、普段の練習量や内容、スケジュールを見直すことが、対策の基本となります。その上に、医療が必要となる場合があるのです。
先ほどまでに申しました注意を実行し、整形外科医の診察、チェックを受けながら、スポーツを続けていくことが勧められます。痛みが続く場合、痛みが強くなる場合などには、再度の検査が必要になることもあるでしょう。最初の時点での検査ではまだはっきりとは現れていなかった異常が判明するようになっていることもあり得ます。
痛みの原因によっては、特に脊椎分離症、椎体終板障害などでは、スポーツを休んで、その上でコルセットを用いるなどの治療が必要になることがあります。さらに、これらの疾患では、背骨へのダメージが残ったままとなり、将来もスポーツや腰の症状の注意が必要になることもありますので、スポーツを休止してでも、十分な対策と治療が必要になることがあります。
お尋ねの件について、直接的な、明確な回答は困難です。質問者の方が望んでいる回答はできせん。10 歳代のスポーツ選手の腰痛と、スポーツによる障害の基本的なところを申し上げるにとどめますが、どこかの病院へ行ってこんな治療法で治るというものではないと思われます。
